R6パッケージのインストールと読み込み
pacman::p_load(R6)R6(Chang 2021)はRのオブジェクト指向プログラミングのためのクラスの一つで、RではS3、S4についでよく利用されているクラスの一つです。
S3がジェネリック関数を使うためだけのクラスなのに対し、S4は比較的まともなオブジェクト指向プログラミングのクラスですが、取り扱いが非常に複雑です。S4はパッケージの開発ぐらいにしか利用されません。
この2つと比べると、R6は最もまともなオブジェクト指向プログラミングのためのクラスと言えます。R6はS3ほどに極端に単純ではなく、S4ほどに複雑な使い方も必要とされません。RubyやPythonを使ったことのある方であれば、S3やS4は受け入れることができなくても、R6は比較的簡単に使いこなすことができるでしょう。
ただし、RではR6はあまり使われていません。Rではクラスを定義してクラスオブジェクト(インスタンス)を作成するところからプログラミングが始まることはほぼなく、クラスメソッドを利用する習慣もありません。
Rではそもそも自分で大きなプログラムを作り上げるということをあまりしないので、クラスの定義をせず、関数があればよい場合が多いです。Pythonで作成したクラスをRに持ち込む場合にはR6は最適な手法の一つですが、他のオブジェクト指向プログラミング言語のようにRでR6を駆使してプログラムを組むことはあまりないでしょう。
また、R6では、Rでの一般的なオブジェクトの変更(値渡し、copy on modify)ではなく、参照渡し(modified in-place)を行う特徴があります。参照渡しを用いることで演算速度は速くなるのですが、オブジェクトがRっぽい挙動をしなくなってしまいます。
とは言え、最近ではRを使って作り上げるプログラム(例えばShinyやplumberなど)もあります。PythonとRで同じようなパッケージを同時に開発するような場合も増えています。そのような場面ではRでもクラスの設計を行うことで効率的なプログラミングができます。
この章では、R6のドキュメントとAdvanced RのR6の章(Wickham 2019)を参考に、R6と、R6を用いてShinyのコードをシンプルに記述する方法について簡単に説明します。
R6はRに組み込まれたクラス(S3、S4)とは異なり、パッケージとして提供されています。R6を用いる場合には、まずR6パッケージをインストールします。
R6パッケージのインストールと読み込み
pacman::p_load(R6)Reference Classはmethodsパッケージで提供されているクラスの一つです。methodsパッケージはS4を提供しているパッケージですが、Reference ClassはS4を用いて実装した、S4よりまともなクラスとして、2010年頃に提供されるようになりました。
R6(2016年頃)はReference Classによく似ているのですが、S4を使っておらず、クラスというよりはenvironmentを作成するようなものになっています。R6はReference Classよりもデータが小さくて速度も速いため、Reference Classは使われず、R6ばかり使われるようになりました。
このReference ClassがR5(S5?)だとすると、次のオブジェクト指向プログラミングのクラスはR6である、ということでR6という名前がこのクラスに付けられています。
同様にR6の次(であり、S3とS4の間の子)、ということでS7(Vaughan et al. 2026)も開発されていますが、まだver.0.2.2(2026年6月現在)で、なかなかver.1.0にはたどり着きそうにありません。しばらくはS3、S4、R6がRの主流なクラスとして用いられることになりそうです。
R6では、クラスの定義にはR6Class関数を用います。R6で用いる関数はほぼこのR6Classのみです。R6Classは色々な引数を取ることができますが、最低限必要な引数はクラス名(classname)とpublicです。
クラス名は文字列で、S4と同じくアッパーキャメルケースで指定します。また、R6Class関数はこのクラス名と同名の変数に代入して用います。以下の例では、R6クラスであるMyDogをMyDog変数に代入しています。
publicはS4のSlotsと同じく、そのクラスの要素を指定する引数です。publicはリストで指定し、要素(R6ではメンバーと呼びます)と、そのクラスのメソッドをリストに含めます。メンバーには値を指定し、メソッドは関数として設定します。
以下の例では、MyDogクラスのメンバーはname、age、trickで、メソッドはshow_ageとなります。
R6Class関数内でそのクラスのオブジェクト自身を評価する場合、selfを用います。例えば、self$ageとすると、そのオブジェクトのメンバーを呼び出すことになります。
R6クラスの定義
MyDog <-
R6Class(
"MyDog", # 第一引数にクラス名を取る
public =
list(
# これがメンバー(指定した値はデフォルト値になる)
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
# これがメソッド
show_age = function(){
self$age # 上のメンバーのageを呼び出す
}
)
)R6のクラスオブジェクト(インスタンス)は、クラス名$new()という形でnewメソッドを用いて作成します。newメソッドがコンストラクタ(S4でのnew関数)に相当します。
RubyやPythonではメソッドを用いる際には$の代わりにピリオド(.)を用いますが、Rではピリオドを変数名に使えてしまうため、代用として$を用いています。
クラスオブジェクトの作成
Pochi <- MyDog$new()R6クラスのメンバーは$でリストのように呼び出すことができます。また、メンバーに値を代入することもできます。
また、メソッドはnewと同様に、オブジェクト名$メソッド名()という形で、クラスオブジェクトに$を繋いで呼び出します。Rの通常の関数とは利用方法が異なりますが、Pythonなどのメソッドを利用している方には自然な表現だと思います。
メンバーとメソッドの呼び出し
# ageに10を代入
Pochi$age <- 10
# ageを呼び出し
Pochi$age[1] 10
# show_ageメソッドを呼び出し
Pochi$show_age()[1] 10
S4と同様に、R6でもオブジェクト作成時に実行されるメソッドである、initializerを設定することができます。
initializerはクラスメソッドと同様にpublicのリスト内で定義し、メソッド名をinitializeとします。このinitializeはnewを実行した際に実行されます。
initializerを設定する
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
public =
list(
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
initialize = function(name, age, trick){
self$name = name
self$age = age
self$trick = trick
}
)
)initializeの引数はnewの引数になります。
initializerに従いnewに引数を設定する
Pochi <- MyDog$new("Pochi", 10, "sit")
Pochi<MyDog>
Public:
age: 10
clone: function (deep = FALSE)
initialize: function (name, age, trick)
name: Pochi
trick: sit
initializerの設定に従い、メンバーの値が設定されているのが分かります。
メンバーの呼び出し
Pochi$name[1] "Pochi"
Pochi$age[1] 10
また、initializerで設定を行っていても、メンバーの値は変更可能です。クラスの定義で特にバリデータの指定がない場合には、現実的ではない値、例えば名前に数値を代入したり、年齢に文字列を代入することもできます。
nameに数値を代入する
Pochi$name <- 10
Pochi$name[1] 10
クラスメソッドは上記の通り、public引数のリストの要素として設定します。
クラスメソッドでは、initializeの他に、printも特別なメソッドとなります。printはR6クラスを表示する方法を指定するための標準のメソッドで、単にクラスオブジェクトを宣言した場合にはprintメソッドで指定した方法で表示されます。
また、クラスのメンバーを変更するようなメソッドでは、invisible(self)を返すように設定するのがよいとされています。
クラスメソッドを設定する
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
public =
list(
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
add_age = function(){
self$age <- self$age + 1
# メンバーを変更する関数ではinvisible(self)を返すようにする
invisible(self)
},
# オブジェクトを表示するときの方法
print = function(){
cat("name:", self$name, "\n")
cat("age:", self$age, "\n")
cat("trick:", self$trick, "\n")
},
initialize = function(name, age, trick){
self$name <- name
self$age <- age
self$trick <- trick
}
)
)クラスメソッドの多くはnewと同様に用いますが、printはオブジェクトを宣言することで実行されます。
printメソッドの実行
Pochi <- MyDog$new("Pochi", 10, "sit")
Pochi # Pochi$print()を呼び出すname: Pochi
age: 10
trick: sit
また、メンバーの値を変更するメソッドを実行すると、そのオブジェクトのメンバーの値自体が変更されます。Rの通常の関数が引数のオブジェクトを直接変更することはありませんので、Rっぽくない挙動となります。
オブジェクトのメンバーを変更するメソッド
# メソッドを用いるとメンバーの値が変更される
# (Rubyで破壊的メソッドと呼ばれるものに近い)
Pochi$add_age()
Pochi$age[1] 11
メンバーの値を変更するメソッドでinvisible(self)を返すように設定していると、メソッドを$で連続して繋ぐことで演算を繰り返すことができます。これは20章で説明したメソッドチェーンです。
以下の例ではクラスオブジェクトにadd_ageを3回実行することで、ageを3増やしています。
メソッドチェーン
Pochi$add_age()$add_age()$add_age()
Pochi$age[1] 14
同様に、ベクターに引数の要素を追加したり、ベクターの最後の値を取り出すpushやpopといったメソッドも比較的簡単に実装できます。
pushとpopを定義する
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
public =
list(
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
# ベクターに引数を追加する(push)
push_trick = function(trick){
self$trick <- c(self$trick, trick)
invisible(self)
},
# ベクターの最後の値を取り出し、残りをtrickに設定する(pop)
pop_trick = function(){
pop_item <- self$trick[length(self$trick)]
self$trick <- self$trick[-length(self$trick)]
pop_item
},
initialize = function(name, age, trick){
self$name <- name
self$age <- age
self$trick <- trick
}
)
)
# pushとpopを利用する
Pochi <- MyDog$new("Pochi", 10, "sit")
Pochi$push_trick("hand")
Pochi$push_trick("lefthand")
Pochi$push_trick("stand")
Pochi$trick[1] "sit" "hand" "lefthand" "stand"
Pochi$pop_trick()[1] "stand"
Pochi$pop_trick()[1] "lefthand"
Pochi$trick[1] "sit" "hand"
S3やS4の章で説明した通り、クラスのメンバーに設定できるデータ型を指定する場合には、バリデータを作成します。R6では、バリデータをinitializerに加えてもよいですが、厳密に型をコントロールしたい場合には別途validateのメソッドを作成してもよいでしょう。
以下の例ではvalidateメソッドを定義し、initializerではself$validate()という形で設定したメンバーの値を評価しています。
バリデータのメソッドを定義する
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
public =
list(
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
validate = function(){
stopifnot(is.character(self$name))
stopifnot(length(self$name) == 1)
stopifnot(is.numeric(self$age))
stopifnot(length(self$age) == 1)
stopifnot(is.character(self$trick))
},
initialize = function(name, age, trick){
self$name = name
self$age = age
self$trick = trick
self$validate()
}
)
)このようなバリデータを設定しておけば、コンストラクタを実行した時、メンバーの値が指定したデータ型と異なるとエラーが出るようになります。
バリデータに従いエラーが出る
MyDog$new("Pochi", "10", "sit")Error in `self$validate()`:
! is.numeric(self$age) is not TRUE
S3やS4にない、R6の設定の一つがprivateです。上記の通り、R6クラスのメンバーはpublic引数にリストとして指定しますが、同様にprivate引数にリストとして指定することもできます。
また、クラスの定義の中でprivateのメンバーを呼び出す場合には、selfを用いるのではなく、private$メンバー名という形で呼び出します。
private
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
# これがpublicのメンバー
public =
list(
name = NULL,
add_age = function(){
# privateのメンバーはprivate$で呼び出す
private$age <- private$age + 1
invisible(self)
},
initialize = function(name, age, trick){
self$name <- name
private$age <- age
private$trick <- trick
},
show_age = function(){
private$age
}
),
# こちらがprivateのメンバー
private =
list(
age = NULL,
trick = NULL
)
)privateの特徴は、クラスのメソッドを用いなければそのメンバーにアクセスできないところにあります。publicのメンバーであれば、$を用いて呼び出したり、代入によって値を変更できますが、privateのメンバーでは$を用いて呼び出すことはできず、値を呼び出したり変更したりしたい場合には、あらかじめ設定したクラスメソッドを用いる必要があります。
したがって、クラスのユーザーがメンバーを直接取り扱うことができないようにしたい場合には、privateにメンバーを設定するとよいでしょう。
privateのメンバーの取り扱い
Pochi <- MyDog$new("Pochi", 10, "sit")
# $ を用いた呼び出しや代入はできない
Pochi$ageNULL
Pochi$age <- 15Error in `Pochi$age <- 15`:
! cannot add bindings to a locked environment
# クラスのメソッドを用いれば、メンバーにアクセスできる
Pochi$show_age()[1] 10
Pochi$add_age()
Pochi$show_age()[1] 11
Rでは、names(obj)<-"name"のように、関数に代入することで値を設定できる場合があります。このような代入による値の変更の機能をクラスに与える場合には、activeを用います。
activeはpublicやprivateと同様にリストを取る引数で、リストのメンバーは関数のみです。この関数には引数を1つ設定する必要があり、invisible(self)を返すような関数を設定します。
active
MyDog <-
R6Class(
"MyDog",
public =
list(
name = NULL,
age = NULL,
trick = NULL,
initialize = function(name, age, trick){
self$name <- name
self$age <- age
self$trick <- trick
}
),
active =
list(
push_trick = function(trick){
if(missing(trick)){return(self$trick)}
self$trick <- c(self$trick, trick)
invisible(self)
}
)
)activeに設定したメソッドは、通常のメソッドと同様にカッコをつけて呼び出すことはできず、カッコなしで呼び出します。また、代入することで代入した値を引数として処理し、メンバーを変更することができます。
activeのメソッドの取り扱い
Pochi <- MyDog$new("Pochi", 10, "sit")
Pochi$push_trick("hand") # エラーError:
! attempt to apply non-function
# missing(trick)がTRUEの場合
Pochi$push_trick[1] "sit"
# missing(trick)がFALSEの場合(代入した値が引数として取り扱われる)
Pochi$push_trick <- "lefthand"
Pochi$trick[1] "sit" "lefthand"
S4と同様に、R6でもクラスを継承することができます。クラスの継承では、親クラス(スーパークラス)をinherit引数に指定します。
また、親クラスのメンバーをクラスの定義内で呼び出す場合には、super$メンバー名という形で、superを用います。
継承
BDMyDog <-
R6Class(
"BDMyDog",
inherit = MyDog,
public =
list(
birthday = NULL,
initialize = function(name, age, trick, birthday){
self$name <- name
self$age <- age
self$trick <- trick
self$birthday <- birthday
},
cgbd_trick = function(birthday, trick){
# 親クラスのメンバーはsuperで呼び出す
self$birthday <- birthday
super$push_trick <- trick
}
)
)子クラス(サブクラス)では、親クラスのメンバーやメソッドを利用することができます。
サブクラスのオブジェクト
Pochi <- BDMyDog$new("Pochi", 10, "sit", "2016/6/3")
Pochi<BDMyDog>
Inherits from: <MyDog>
Public:
age: 10
birthday: 2016/6/3
cgbd_trick: function (birthday, trick)
clone: function (deep = FALSE)
initialize: function (name, age, trick, birthday)
name: Pochi
push_trick: active binding
trick: sit
# 親クラスのメソッドを利用
Pochi$push_trick <- "hand"
Pochi$trick[1] "sit" "hand"
Pochi$cgbd_trick("2020/6/3", "lefthand")
Pochi<BDMyDog>
Inherits from: <MyDog>
Public:
age: 10
birthday: 2020/6/3
cgbd_trick: function (birthday, trick)
clone: function (deep = FALSE)
initialize: function (name, age, trick, birthday)
name: Pochi
push_trick: active binding
trick: sit hand lefthand
プログラミングでオブジェクトをコピーする場合、オブジェクトは主に2つの方法でコピーされます。
値渡しでは、新規のオブジェクトを作成し、そのオブジェクトに元のオブジェクトの値が代入されます。元のオブジェクトとコピーしたオブジェクトは独立で、片方を変更してももう片方のオブジェクトは変更されません。
参考渡しではコピーする際に、値ではなく、値が格納されたメモリのアドレスのみを渡します。参照渡しではメモリのアドレスを共有するだけなので、新しくメモリ上にデータを作成する必要がなくなります。ですので、値渡しより速く、メモリのサイズを小さくできます。
Rでのオブジェクトのコピーはほぼ値渡しで、copy on modifyと呼ばれます。
一方で、R6ではオブジェクトのコピーは参照渡し(modified in-place)で行われます。参照渡しでは、コピーしたオブジェクトを変更すると、以下のようにコピー元のオブジェクトも変更されます。
R6での参照渡し
# Pochi$ageは10
Pochi$age[1] 10
# PochiをコピーしてKuroに代入
Kuro <- Pochi
# Kuroのageを15に変更
Kuro$age <- 15
# Pochiのageも15になる
Kuro$age[1] 15
Pochi$age[1] 15
R6で値渡しを行う場合には、cloneメソッドを用います。以下の例では、Kuro$ageを変更しても、Pochi$ageには影響がなく、値渡しとなっていることがわかります。
cloneメソッドで値渡しを行う
# Pochi$ageは10
Pochi$age <- 10
# cloneメソッドを用いる
Kuro <- Pochi$clone()
# Kuroのageを15に変更
Kuro$age <- 15
# Pochi$ageは10のまま
Kuro$age[1] 15
Pochi$age[1] 10
ただし、単にcloneメソッドを用いると、コピー元とコピー先でオブジェクトの一部を共有したままになるため、完全に値渡しとしたい場合にはdeep=TRUEを指定するとよいでしょう。
Deep cloning
Shiro <- Pochi$clone(deep = TRUE)finalizeはオブジェクトを削除する際に実行されるメソッドです。finalizeはprivateのメンバーとして設定します。オブジェクトをrm関数で削除する時やRを終了するときにこのメソッドが呼び出されます。
クラスオブジェクトを作成し、rm関数で削除しても、特に何も返ってきません。しかし、ガベージコレクションを確認するgc関数を実行すると、finalizeで実行したprint関数の結果が表示されます。
[1] "オブジェクトを削除しました。"
used (Mb) gc trigger (Mb) max used (Mb)
Ncells 730363 39.1 1417907 75.8 1417907 75.8
Vcells 1347303 10.3 8388608 64.0 2286265 17.5
上記のような使い方ではfinalizeは役に立ちませんが、データベースやwebへの接続をオブジェクトの削除時に切断したいときには有用です。
R6ではデフォルトでsetというメソッドが設定されています。このsetを使えばクラスにメンバーを追加することができます。setはメンバーを追加する場所(publicかprivateか)、メンバー名、メンバーのデフォルト値を引数に取ります。また、メンバーのデフォルト値に関数を指定すると、メソッドを追加することができます。
setメソッドでメンバーを追加する
A$set("public", "b", NULL)R6もS4のように、主にパッケージの開発で用いられるクラスです。ただし、R6はShinyの開発のような、Rのユーザーに近い部分でも利用することができます。
Shinyでは、UIとServerの両方に同じ名前のinputIdとoutputIdを用いる必要があります。UI側で設定したinputIdをServer側で、Server側で設定したoutputIdをUI側で利用します。Shinyで表示するものが増えていくと、この組み合わせがどんどん増えていって、どこで何のIDを用いているのか分からなくなっていきます。
ですので、複雑なShinyアプリを作りたいときには、Shinyのコードをうまく整理する必要があります。このコードの整理には、Shiny ModulesとR6を利用するのがよいとされています。
ココからは、このブログポスト(Modularize your shiny app using shiny module and R6 class)を参考に、Shiny ModulesとR6を使って整理する方法について簡単に説明します。
以下のShinyのテンプレートとして表示されるコードをShiny ModulesとR6でそれぞれ整理していきます。
Shinyでコードを書くときに困るものは、ネストの深さと名前の問題です。特に、上記のinputIdとoutputIdの名前の問題はShinyの開発には常に付きまといます。この名前の問題を解決するため、ShinyではShiny Modulesという機能を提供しています。
Shiny Modulesはただの関数です。UI側とServer側のコードをひとまとめの関数としておき、inputIdとoutputIdを決めるidという引数を取る形をしたものを準備するだけです。この関数を用いると、定型のShinyをidの名前一つだけで管理できるようになり、Shinyのコードをシンプルにすることができます。
UI側のModulesはxxxUIという名前の関数として作成します。関数の引数はidとし、文字列のidを指定できるようにします。
関数の中身はtagList関数の中に書いていきます。このtagListはhtmltoolsパッケージ(Cheng et al. 2025)の関数で、htmlのタグ付きテキストを返します。Shiny Modulesで用いる場合にはこの関数の機能を理解する必要は特にありません。
次に、inputIdとoutputIdの部分をNS関数を使って書き換えます。NS関数は引数が2つの文字列の場合には文字列をハイフンでつなぎ、引数が一つの時には文字列をハイフンでつなぐ関数を返す関数です。どちらにしても、idをうまく処理するために用います。
このtagList関数とNS関数を利用してModulesにしたものが以下のhistgramUIです。
histogramUI <- function(id){
tagList(
sliderInput(NS(id, "bins"),"Number of bins:", min = 2, max = 50, value = 30),
plotOutput(NS(id, "hist"))
)
}ui <- fluidPage(
fluidPage(
sliderInput("bins","Number of bins:", min = 2, max = 50, value = 30),
plotOutput("distPlot")
)
)次にServer側のModulesを作成します。Server側も関数として作成し、xxxServerという名前とします。引数にはidとその他の引数を設定しておきます。
Server側では、moduleServerという関数を用います。このmoduleServerもいまいちよくわからない関数ですが、引数にidとserverの中身を取ります。
また、moduleServerが実装される前には、callModuleという関数が使われていました。現在では基本的にmoduleServerの利用が推奨されており、callModuleは使わない方がよいとされていますが、後ほどR6でShinyを整理する際にはcallModuleを用います。
histogramServer <- function(id, x){
moduleServer(
id,
function(input, output, session){
output$hist <-
renderPlot({
hist(x, breaks = input$bins)
})
}
)
}hist_server <- function(input, output, session, x){
output$distPlot <- renderPlot({
hist(x, breaks = input$bins)
})
}
server <- function(input, output, session, id, x){
callModule(hist_server, id. x)
}server <- function(input, output){
output$distPlot <- renderPlot({
x <- faithful[, 2]
hist(x, breaks = input$bins)
})
}上記のModulesの関数は、global.R内で定義するか、Shiny実行時に読み込まれる"/R"ディレクトリにスクリプトを保存して用いるのがよいでしょう。
では、上記のUI・ServerのModulesを用いたアプリを実行できる形にしてみましょう。以下のように、uiとserverとして、上記で設定したModulesの関数を呼び出します。ただし、UIのModulesにはレイアウトに関する関数は含まれていないので、uiの設定時にレイアウトの関数でModulesの関数を囲う必要があります。
ModulesにUI、Serverの要素を含めることで、アプリはかなりシンプルになります。また、同じような構成のアプリを作成する場合にはModulesを転用することもできます。
Shiny Modulesを用いたアプリの構成
histogramApp <- function(){
x <- faithful[, 2]
ui <- fluidPage(
histogramUI("hist1")
)
server <- function(input, output, session){
histogramServer("hist1", x)
}
shinyApp(ui, server)
}
histogramApp()上記の通り、Shiny Modulesを使えばShinyのコードを整理することができ、Modulesを別のアプリで利用することもできます。ただし、UIとServerのModulesはそれぞれ独立の関数で、セットで利用する必要があるのに関数としては2つに分離しています。
この2つのUIとServerのModulesの関係を結合し、クラスオブジェクトとして取り扱いできるようにするのがR6クラスです。
R6クラスでShinyを整理する場合、R6クラスのメンバーはidとし、initializeでidを設定できるようにします。
また、メソッドとしてuiとserverを設定します。uiはShiny Modulesとほぼ同じ形で設定します。serverはシンプルなShinyの記述で設定しておきます。uiではレイアウトの自由度を確保するため、input側とoutput側で独立のメソッドとしても良いかもしれません。
さらにもう一つ、callというメソッドを作成します。このcallメソッドでは、callModuleを実行する形とし、self$serverとself$idを引数に取っておきます。
このR6クラスもglobal.Rや"/R"ディレクトリに保存しておくとよいでしょう。
ShinyをR6で整理する:uiとserverの定義
library(R6)
library(shiny)
SliderHistogramModule <-
R6Class(
"SliderHistogramModule",
public =
list(
id = NULL,
initialize = function(id){
self$id = id
},
ui = function(){
ns <- NS(self$id)
tagList(
sliderInput(ns("bins"),"Number of bins:", min = 1, max = 50, value = 30),
plotOutput(ns("hist"))
)
},
server = function(input, output, session, x){
output$hist <-
renderPlot({
hist(x, breaks = input$bins)
})
},
call = function(input, ouput, session, id = self$id, x){
callModule(self$server, self$id, x)
}
)
)アプリを実行するためのR6クラスは別途定義します。このR6クラスでは、idの個数分だけメンバーを設定し、initializerでこのメンバーに上で定義したR6クラスのオブジェクト(SliderHistogramModule)を登録します。
uiとserverもメソッドとして登録します。uiにはレイアウトを含めたものとし、R6クラスのuiメソッドを呼び出すようにします。serverではR6クラスで定義したcallメソッドを呼びだします。
App <-
R6Class(
"App",
public =
list(
hist1 = NULL,
hist2 = NULL,
initialize = function(){
self$hist1 = SliderHistogramModule$new("hist1")
self$hist2 = SliderHistogramModule$new("hist2")
},
ui = function(){
fluidPage(
self$hist1$ui(),
tags$hr(),
self$hist2$ui()
)
},
server = function(input, output, session){
self$hist1$call(x = faithful[, 2])
self$hist2$call(x = cars[, 2])
}
)
)上記のアプリを実行するためのR6クラスのインスタンスを作成し、shinyApp関数で実行するとアプリを起動できます。
アプリの実行
app = App$new()
shinyApp(app$ui(), app$server)