並列演算(Parallel Computing)

我々が算数のテストを解くとき、普通は一番初めの問題から一つづつ、順番に解いていきます。Rも同じで、スクリプトとして書いたコードを上から1行ずつ評価し、演算します。for文などの繰り返し演算でも同じで、繰り返し回数分だけ順番に演算を行います。しかし、繰り返し演算に時間のかかる処理が含まれると、演算にはとても時間がかかります。

1人で計算せずに2人で計算すればテストは速く解けます。同様に、Rでも1つのRで演算せずに、2つ以上のRで演算すれば速く演算が終わります。for文であれば、以下のように2つに分けて、2つのRで計算すれば演算時間を半分ぐらいにできます。

for文を分割する
# 通常のfor文
for(i in 1:10){sqrt(i)}

# 上記のfor文を2つに分ける
for(i in 1:5){sqrt(i)}
for(i in 6:10){sqrt(i)}

時間のかかる演算を少しでも速くするため、繰り返しのある演算を分割し、分割した演算を複数立ち上げたR(セッション)で演算することで計算速度を速める手法のことを並列演算(Parallel Computing)と呼びます。

セッション

Rのセッションとは、Rが起動して演算できる状態であることを示す言葉です。R GUIを起動するとRのセッションが1つ立ち上がります。同時にR GUIをもう一つ開くこともでき、1つ目のRと2つ目のRで別の演算を行うことができます。

並列演算では、Rをたくさん立ち上げる、つまりセッションをたくさん準備して、そのそれぞれのセッションに演算を分割することで演算速度を速めます。この立ち上げたセッションのまとまりのことをクラスターとも呼びます。

重い演算を用いる統計のライブラリでは、ライブラリの機能自体に並列演算が組み込まれている場合があります。一方で、自分で書いたスクリプトで並列演算を行いたい場合、自分で演算を分割して複数のセッションに投げる、というのは大変ですので、ライブラリを利用してRに並列演算を任せることになります。

並列演算の手法

並列演算には大きく分けて、SocketForkと呼ばれる2つの方法があります。

  • Socket:Rのセッションを新規に立ち上げ、それぞれのセッションで演算を行う手法
  • Fork:Rの現在のセッションをコピーし、複数のセッションでそれぞれ演算を行う手法

あまり変わらないように見えますが、Socketでは現在のセッションの情報を別のセッションでは持ち越せない、つまりライブラリの読み込みの状態や変数は別のセッションには持ち込まれないのに対し、Forkではライブラリの読み込みの状態や変数も(メモリを共有する形で)持ち込めます。

Socketでは各セッションでライブラリの読み込みや変数の設定を行う必要があり、時間が取られます。一方でForkはライブラリの読み込みや変数の設定を行うことなく演算ができます。

何より違うのは、Windowsでは基本的にForkを使えない、ということです。ですので、LinuxやMacOSではSocketもForkも使えるのに対し、WindowsではSocketしか使えません。また、RStudioはForkと相性があまりよくありません。自分のPCでForkが利用可能かどうかは、以下のparallelly::supportsMulticore関数で確認することができます(Bengtsson 2026b)。Forkが利用可能であればTRUEが、利用できなければFALSEが返ってきます。

parallelly::supportsMulticore関数でForkが使えるか確認する
pacman::p_load(parallelly)
supportsMulticore()
[1] FALSE

並列演算のライブラリ

CRAN: Task ViewsにはRmpi(Yu 2002)snow(Tierney et al. 2021)がRの並列演算のコアパッケージであるとされています。これらは基本のライブラリで、他のライブラリの開発などに用いることが想定されており、Rのユーザーが自分のスクリプトで利用するのは難しいです。

ユーザー向けの並列演算のライブラリとして、現在では主に以下の3つが利用されています。

parallelが最も昔から用いられているパッケージで、長年よく利用されていたのがforeachdoParallelパッケージです。futureは2017年頃から開発が始まり、2021年にver.1.0となった新しいパッケージです。futureにはfutureverseというパッケージ群があり、parallelforeachよりも簡単で安全に並列演算ができるパッケージとなっています。また、2026年にはfuturize(Bengtsson 2026a)というfutureをより簡単に利用できるライブラリが発表されています。

ここではまずparallelforeachから説明しますが、とりあえず並列演算を試してみたい、という場合には右のメニューからfutureパッケージの記事を選んで読んでいただければと思います。

parallelパッケージ

まずはparallelパッケージから説明します。parallelはSocket・Forkの両方に対応し、19章で説明したapply関数に相当する演算を並列化することができるライブラリです。

まずはparallelパッケージをインストールし、読み込みます。21章で紹介した演算時間計測のためのパッケージであるtictoc(Izrailev 2023)も同時に読み込んでおきます。

parallelパッケージの読み込み
pacman::p_load(parallel, tictoc)

次に、自分のPCのCPUのコアの数をdetectCores関数で調べます。現代のPCに搭載されているCPUは、通常6個以上のコアを持ちます。このコアはPCでマルチタスクを行うために用いられているCPUの演算の基本単位で、並列演算の場合には複数のコアを利用して演算を行います。私の使っているPCではコアは20個ですので、並列演算は最大で20まで設定できます。

ただし、すべてのコアをRに捧げてしまうと他のことがPCでできなくなったり、演算が遅くなってしまいますので、利用するコアは最大でもdetectCoresの返り値から1を引いた数、私のPCであれば19、で設定するのがよいでしょう。

CPUのコアの数を調べる
detectCores()
[1] 20

まずは通常の演算(上から順番に計算するのでsequentialと呼ばれます)で重めの計算をしてみます。以下の関数は2秒待った後で引数xをそのまま返す関数です。

2秒待つ関数
f <- function(x = 1){
  Sys.sleep(2)
  x
}

次に、19章で説明したlapply関数でf関数の演算を3回行います。この演算にかかる時間をsystem.time関数で調べると、6秒程度かかっていることがわかります。2秒かかる関数の演算を3回繰り返しているので当然の結果です。

lapply関数で演算時間を計測
lapply(1:3, f) |> system.time()
   user  system elapsed 
   0.00    0.00    6.12 

次に、parallelパッケージでForkを利用したlapplyの計算を行うmclappply関数を使ってみます。mc.coresは利用するコアの数を指定するための引数です。ForkはWindows PCでは利用できないため、エラーが出て演算が行われません。

ForkはWindowsでは利用できない
mclapply(1:3, f, mc.cores = 3) |> system.time()
Error in `mclapply()`:
! 'mc.cores' > 1 is not supported on Windows
Timing stopped at: 0.02 0 0

mclapplyをDockerのrocker/rstudioで実行すると2秒で計算が終わります。2秒かかるf関数を3回行う演算がf関数1回分で終わっていることになります。ですので、LinuxやMacOSではmclapplyを用いることでForkでの並列演算を行うことができています。

Linuxでのmclapplyの実行

Linuxでのmclapplyの実行

WindowsではSocketを用いる関数であるparLapply関数を用いて並列演算を行います。ただし、parLapply関数はそのままでは並列演算を行うことができず、エラーが出ます。

parLapply関数のエラー
parLapply(1:3, f) |> system.time()
Error in `checkCluster()`:
! not a valid cluster
Timing stopped at: 0 0 0

エラーメッセージに示された通り、parLapply関数を用いる場合にはまずクラスターを設定する必要があります。クラスターはmakeCluster関数で設定できます。makeCluster関数の引数は数値で、detectCores関数で調べたコアの数より小さい数値を入力します。以下の例では3つのクラスターを設定しています。

makeCluster関数はclという変数に代入しておき、後ほどparLapply関数の引数として用います。

クラスターの設定:makeCluster関数
cl <- makeCluster(3)

makeCluster関数を実行後、リソースモニターで確認すると、RstudioのRセッション(rsession-utf8.exe)以外に3つのRセッション(Rscript.exe)が実行されていることがわかります。

makeCluster関数で起動したRのセッション

makeCluster関数で起動したRのセッション

この状態でparLapply関数にclを引数として設定し実行すると、エラーが出ずに演算が2秒程度で完了します。parLapply関数でも並列演算によって、2秒かかるf関数を3回実行した時、1回分の演算時間で計算が完了していることが分かります。

parLapply関数での並列演算
parLapply(cl, 1:3, f) |> system.time()
   user  system elapsed 
   0.00    0.00    2.06 

makeCluster関数で起動したRのセッションはRを閉じても起動したままになってしまいます。並列演算が終わった後には、stopCluster関数で起動したRのセッションを閉じます。

stopCluster関数でセッションを閉じる
stopCluster(cl)

ここまでがparallelパッケージの基本的な使い方です。以下にmclapplyparLapply以外の並列演算用の関数を示します。

parallelパッケージの関数群
関数名 対応するapply関数 演算の方法
mclapply lapply Fork
mcmapply mapply Fork
parLapply lapply Socket
parSapply sapply Socket
parApply apply Socket
parRapply apply(MARGIN = 1) Socket
parCapply apply(MARGIN = 2) Socket
clusterMap mapply Socket

ライブラリの利用と変数の設定

次に、ライブラリを利用する関数について、Socketで利用する場合を見ていきます。以下の関数f2stringrを読み込んだ後で定義されており、stringrで提供されている関数str_cを用いています。

ライブラリを用いる関数
library(stringr)
f2 <- function(x){
  str_c(x, ", ", Sys.time())
}

lapply関数でf2関数を利用した場合には、特に問題なく演算できます。また、Forkを用いるmclapplyでも問題なく並列演算を行うことができます。

lapply関数でf2関数を用いる
lapply(1:3, f2)
[[1]]
[1] "1, 2026-03-21 07:41:40.745798"

[[2]]
[1] "2, 2026-03-21 07:41:40.747191"

[[3]]
[1] "3, 2026-03-21 07:41:40.747304"

一方で、Socketの並列演算を行うparLapply関数でf2関数を呼び出すと、エラーが出ます。これは、Socketでは現在のセッションで呼び出したライブラリや定義した変数は別のセッションにはコピーされないため、ライブラリで設定されている関数(str_c)が利用できないためです。

Socketではライブラリの状態はコピーされない
cl <- makeCluster(3)
parLapply(cl, 1:3, f2)
Error in `checkForRemoteErrors()`:
! 3 nodes produced errors; first error: could not find function "str_c"

各セッションでライブラリをロードする場合には、clusterEvalQ関数を用います。clusterEvalQ関数は第一引数にmakeClusterで作成したクラスター(cl)、第2引数に各セッションで読み込むコードを表記します。あらかじめclusterEvalQでライブラリを読み込んでおくことで、各セッションでライブラリを読み込み、ライブラリを用いた演算を行うことができます。

clusterEvalQ関数でライブラリを用いる
clusterEvalQ(cl, library(stringr))
[[1]]
[1] "stringr"   "stats"     "graphics"  "grDevices" "utils"     "datasets" 
[7] "methods"   "base"     

[[2]]
[1] "stringr"   "stats"     "graphics"  "grDevices" "utils"     "datasets" 
[7] "methods"   "base"     

[[3]]
[1] "stringr"   "stats"     "graphics"  "grDevices" "utils"     "datasets" 
[7] "methods"   "base"     
parLapply(cl, 1:3, f2)
[[1]]
[1] "1, 2026-03-21 07:41:41.07577"

[[2]]
[1] "2, 2026-03-21 07:41:41.075777"

[[3]]
[1] "3, 2026-03-21 07:41:41.075943"

同様に、現在のセッションで変数yを定義し、このyを用いた関数を並列演算で使ってみます。

関数外の変数を利用する関数
y <- 2

f3 <- function(x){
  x + y
}

この場合もやはりparLapply関数ではyを読みだせず、エラーとなります。Socketではライブラリだけでなく、変数の設定も別途指示する必要があります。

変数yが各セッションで設定されていないためエラー
parLapply(cl, 1:3, f3)
Error in `checkForRemoteErrors()`:
! 3 nodes produced errors; first error: object 'y' not found

上記のライブラリの設定の場合と同じく、clusterEvalQ関数で変数yを設定しておくと、parLapplyの演算が実行されます。

clusterEvalQ関数で変数を指定する
clusterEvalQ(cl, y <- 2)
[[1]]
[1] 2

[[2]]
[1] 2

[[3]]
[1] 2
parLapply(cl, 1:3, f3)
[[1]]
[1] 3

[[2]]
[1] 4

[[3]]
[1] 5

現在のセッションからSocketのセッションへと変数を持ち出す場合、clusterExport関数を利用することもできます。clusterExport関数はクラスターの変数clと文字列の変数名を引数に取ることで、現在のセッションで設定されている変数を各セッションに持ち出すことができます。

clusterExport関数で設定を持ち出す
clusterExport(cl, "y")
parLapply(cl, 1:3, f3)
[[1]]
[1] 3

[[2]]
[1] 4

[[3]]
[1] 5

とは言え、たくさんの変数やライブラリをSocketのセッションに持ち込むのは大変です。利用するライブラリや変数は関数内で指定する方がよいでしょう。

foreach + doParallelパッケージ

foreachapply関数群に近い演算を行うforeach関数を提供しているパッケージです。foreachfor文っぽい構文で利用します。ただし、foreachfor文というわけではないので、やや分かりにくいところのある関数ではあります。

foreachはそれだけでは並列演算に用いることはできませんが、doParallelと組み合わせることで並列演算を行うことができます。doParallelforeachに並列演算を持ち込むためだけのライブラリで、foreachdoParallelはほぼ常にセットで利用されます。

ライブラリの読み込み
pacman::p_load(foreach, doParallel)

foreach関数の構文

foreach関数は以下のような式で利用します。for文と同じように、foreachの後ろのカッコにはイテレーターのベクターを設定します。for文でのカッコと中カッコ({})の間には%do%という演算子を用います。

foreachの式
# for(i in vec){eval}と同じ
foreach(i = vec) %do% {eval}

forforeachの違いは式の形だけでなく、返り値にもあります。for文はそれ自体は何も返しませんが、foreachは返り値があります。返り値のデフォルトはリストで、{eval}で演算したものをリストの要素として返します。

foreachの返り値
foreach(i = 1:3) %do% {f(i)}
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 2

[[3]]
[1] 3

ですので、上記のforeach関数は下のlapplyと同じ演算になります。

foreachと同じ演算のlapply
lapply(1:3, f)
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 2

[[3]]
[1] 3

また、for文をネストする場合と同じく、foreachもネストすることができます。以下のforeach文ではijを繰り返す演算を行っています。このforeachforeachを繋いでネストする場合には、%:%という演算子を用います。

%:%でネストする
# for(i in 1:2) for(j in 1:2){paste("i=", i, "j=", j, "i+J=", i + j)}とほぼ同じだが、
# 返り値があり、リストを返すところが異なる
foreach(i = 1:2) %:% foreach(j = 1:2) %do% {paste("i=", i, "j=", j, "i+J=", i + j)}
[[1]]
[[1]][[1]]
[1] "i= 1 j= 1 i+J= 2"

[[1]][[2]]
[1] "i= 1 j= 2 i+J= 3"


[[2]]
[[2]][[1]]
[1] "i= 2 j= 1 i+J= 3"

[[2]][[2]]
[1] "i= 2 j= 2 i+J= 4"

foreach文はそのままでは並列演算ではないため、2秒かかる関数であるf関数を用いると、繰り返した分だけ時間がかかります。

並列演算ではないforeach
tic()
a <- foreach(i = 1:3) %do% {f(i)}
toc()
6.14 sec elapsed

foreachの引数.combineには演算結果を結合する方法を指定することもできます。.combine=cを指定すると返り値はベクター、.combine=cbindを指定すると返り値は行列になります。

.combine引数を指定する
foreach(i = 1:3, .combine = c) %do% {f(i)} # 返り値はベクター
[1] 1 2 3
foreach(i = 1:3, .combine = cbind) %do% {f(i)} # 返り値は行列
     result.1 result.2 result.3
[1,]        1        2        3

並列演算:%dopar%

foreach関数のカッコの間の演算子である%do%%dopar%に変更すると、並列演算型のforeachの記法になります。ただし、%do%%dopar%に変更するだけでは並列演算を行うことはできません。parallelの場合と同様に、foreachでもあらかじめクラスターを設定する必要があります。

%dopar%演算子
tic()
a <- foreach(i = 1:3) %dopar% {f(i)}
Warning: executing %dopar% sequentially: no parallel backend registered
toc()
6.12 sec elapsed

クラスターの設定

クラスターの設定はparallelパッケージとほぼ同じで、makeCluster関数で設定します。makeCluster関数の返り値はregisterDoParallel関数の引数とします。

doParallel:クラスターの設定
cores <- detectCores() - 1

cl <- makeCluster(cores)

registerDoParallel(cl)

クラスターを設定した上でforeach関数を%dopar%演算子で実行すると、並列演算を行うことができます。

foreachで並列演算
tic()
a <- foreach(i=1:19) %dopar% {f(i)}
toc()
2.1 sec elapsed

%dopar%を用いた演算はSocketですので、演算にライブラリを用いる場合にはエラーが出ます。

foreachでのライブラリの取り扱い
a <- foreach(i=1:19) %dopar% {f2(1)}
Error in `{
    f2(1)
  }`:
! task 1 failed - "could not find function "str_c""

foreachでは.packages引数にライブラリ名を文字列で指定することで、Rの各セッションでライブラリを読み込ませることができます。parallelと同様に、関数の中でライブラリの呼び出しや変数の定義を行った方が演算しやすいでしょう。

.packages引数
a <- foreach(i=1:7, .packages = "stringr") %dopar% {f2(1)}

parallelの場合と同様に、並列演算のためのRのセッションを閉じる時にはstopCluster関数を用います。

セッションの終了
stopCluster(cl)

Forkの演算:doMCパッケージ(unavailable)

foreachでForkを用いた並列演算を行う場合にはdoMCパッケージを用いる、はずなんですが、doMCパッケージの機能を支えていたmulticoreパッケージがCRANから削除されており、doMCもインストールできなくなっています。現状foreachを用いた場合のForkは次に説明するfutureパッケージ(doFuture)でのみ利用可能なようです。

doMCによる並列演算
pacman::p_load(doMC) # インストール・演算できない
resisterDoMC(4)
foreach(i = 1:3) %dopar% {f(i)}

futureパッケージ

futureパッケージは最後発の、よりモダンな並列演算のためのライブラリです。futureは基礎的な並列演算の関数を提供するためのライブラリで、このfutureを使ったライブラリ群(future.applyfurrrdoFuturefuturize)と共にfutureverseというパッケージ群が整備されています。ただし、futureverseにはtidyverseのように一度にライブラリをインストール・ロードできるような仕組みはありません。

ライブラリの読み込み
pacman::p_load(future)

並列演算方法の指定

futureでは、並列演算の方法をplan関数で指定します。plan(sequential)は通常のRと同じ演算、plan(multisession)はSocketでの並列演算、plan(multicore)はForkでの並列演算をそれぞれ指定します。

plan関数でモードの選択
plan(sequential)

この他にもplan関数の引数があり、それぞれ異なる設定で並列演算を組むことができます。plan関数の引数の一覧を以下の表に示します。

future:plan関数の引数と並列演算のモード
引数の設定 演算の方法
sequential 通常の演算(上から順に演算)
multisession Socketによる並列演算
cluster 複数のPC(リモートを含む)を利用したSocketによる並列演算
multicore Forkによる並列演算
callr callrパッケージを用いた並列演算。メモリがすぐに解放される
mirai_multisession miraiパッケージを用いた並列演算。遅延が小さい
mirai_cluster miraiパッケージを用いた並列演算。miraiデーモンというセッションを用いる。複数PCを利用可能

futureでは、並列演算を行う部分をfuture関数で表現します。ただし、このfuture関数の返り値はそのまま呼び出すことはできません。future関数の返り値はvalue関数の引数に取り、value関数の返り値としてfuture関数での演算結果が返ってきます。

以下の例ではplan(sequential)を指定しているため、future関数の部分は並列ではなく、順番に評価されています。

future関数とvalue関数
tic()

# 以下の3つが並列演算される部分
a <- future(f(1))
b <- future(f(2))
d <- future(f(3))

value(a)
[1] 1
value(b)
[1] 2
value(d)
[1] 3
toc()
6.14 sec elapsed

plan(multisession)を指定すると並列演算となり、全体の演算が2秒程度で完了します。

multisession:並列演算
plan(multisession)

tic()

a <- future(f(1))
b <- future(f(2))
d <- future(f(3))

x <- value(a)
y <- value(b)
z <- value(d)

toc()
2.1 sec elapsed

ただし、plan(multisession)を指定すると利用できる最大数のセッションが準備されてしまいます。plan関数ではworkers引数を指定することで準備するセッションの数を指定することができます。

workersを指定する
plan(multisession, workers = 3)

future関数は()の中に中カッコ({})を設定し、複数行のスクリプトを記述することもできます。

future関数の引数に複数の要素を設定する
a <- future({x <- 1; x * 10})

futurevalueで呼び出す方法はやや迂遠です。futureでは、%<-%という形の演算子でfuturevalue関数を合わせた演算を行うことができます。

%<-%演算子
a %<-% {f(1)}
b %<-% {f(2)}
d %<-% {f(3)}

futureでは現在のセッションで読み込んでいるライブラリを自動的にクラスターで読み込んだ上で演算してくれる場合もあります。以下の例ではstringrの関数を用いていますが、問題なく演算が行われています。また、読み込むライブラリを指定する場合にはfuture関数のpackages引数として文字列で指定することもできます。

futureでのライブラリの読み込み
# ライブラリを明示するときは a <- future({f2(1)}, packages="stringr") とする
a %<-% {f2(1)}
b %<-% {f2(2)}
d %<-% {f2(3)}

c(a, b, d)
[1] "1, 2026-03-21 07:42:31.157118" "2, 2026-03-21 07:42:31.160815"
[3] "3, 2026-03-21 07:42:31.173022"

ただし、変数を指定する場合にはクラスターで変数を指定してくれない場合もあります。

変数の指定がうまくいかない場合
reset <- FALSE
x <- 1
y %<-% {if (reset) x <- 0; x + 1 }
y
Error:
! object 'x' not found

このような場合には、futureに与える式の中で一度変数を宣言してやるとうまくいくようになります。

reset <- FALSE
x <- 1
y %<-% { x; if (reset) x <- 0; x + 1 }
y
[1] 2

futureではparallelforeach + doParallelのようにクラスターを止める関数はありません。Rが閉じればクラスターも止まりますが、明示的にクラスターを止める場合にはplan(sequential)を実行するとよいでしょう。

futureverse

上記の通りfutureでは簡単に並列演算を実装することができます。しかし、並列演算するそれぞれのコードはいちいち記述しないといけませんし、apply関数などで利用するにはやや不便です。

この問題に対応するため、futureverseではapply関数、purrrの関数(44章参照)(Wickham and Henry 2023)foreachでの並列演算を行うための以下の3つのライブラリ群を備えています。

3つのライブラリをロードすることで、簡単にfutureを用いた並列化の演算を行うことができます。future.applyではfuture_applyなどの関数(apply関数の並列化)、furrrではfuture_mapなどの関数(purrr::mapの並列化)、doFutureでは%dofuture%演算子を使うことでそれぞれfutureでの並列演算を行うことができます。

future.apply
pacman::p_load(future.apply, furrr, doFuture)

future_apply(iris[, 1:4], 2, mean)
Sepal.Length  Sepal.Width Petal.Length  Petal.Width 
    5.843333     3.057333     3.758000     1.199333 
furrr
future_map(1:5, sqrt)
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 1.414214

[[3]]
[1] 1.732051

[[4]]
[1] 2

[[5]]
[1] 2.236068
doFuture
foreach(i = 1:3) %dofuture% {f(1)}
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 1

[[3]]
[1] 1

futurizeパッケージ

とは言っても、それぞれのパッケージにはたくさんの関数が設定されており、覚えるのも大変です。昔から用いていたapplypurrrforeachの関数をそのまま並列化できたほうが便利です。

そこで、futureverseでは今まで用いていた関数をそのままfutureの手法で並列化するためのライブラリであるfuturizeパッケージを提供しています。

このfuturizeパッケージのfuturize関数を用いるだけで、今まで使っていた関数を並列化することができます。

futurizeを利用する際にはfuture.applyfurrrdoFutureも読み込む必要があります。

futurizeパッケージの呼び出し
pacman::p_load(futurize, future.apply, furrr, doFuture)

futurize関数の使い方は簡単で、planで並列化の方法を指定した後、applymapforeach関数の後にfuturize関数をパイプで繋ぐだけです。futurize関数をパイプで繋ぐだけでそれぞれの関数をfuture式の並列演算に変換(futurize)することができます。

futurize関数
apply(iris[, 1:4], 2, mean) |> futurize() # future_applyと同じ
Sepal.Length  Sepal.Width Petal.Length  Petal.Width 
    5.843333     3.057333     3.758000     1.199333 
map(1:5, f) |> futurize() # future_mapと同じ
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 2

[[3]]
[1] 3

[[4]]
[1] 4

[[5]]
[1] 5
foreach(i = 1:3) %do% {f(1)} |> futurize() # %doFuture%を用いるのと同じ
[[1]]
[1] 1

[[2]]
[1] 1

[[3]]
[1] 1
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